1.巻柏の年間管理
春の管理
桜の開花から葉桜に向かう時分に、休眠中の巻柏を棚に出して水を充分に与えます。この時期の雨が降る日に合わせて覚醒させると良いでしょう。覚醒後しばらくの間、昨年の紅葉の姿を楽しむことができます。以後水を切らさないように管理しますと、葉が緑色を戻し始め葉先の芽が動き始めます。5月から6月の間、巻柏は活性が高くよく生長します。植え替えや挿し芽の適期です。
夏の管理
梅雨時期に生長した柔らかい葉が、梅雨明けの強光によって焼けることがあります。遮光ネットで日覆いをする等の対策をとってご注意下さい。梅雨明け後は、 朝夕、鉢底からから水が抜けるまで充分に灌水します。銘鑑に記載される数々の品種は、日照管理によって葉芸や葉色が独特に変化します。また一部の品種は強
光に弱いことが知られていますので、置き場や遮光条件を工夫されると良いでしょう。
秋の管理
巻柏の紅葉期です。充分に日光に当て、灌水は夏期より幾分控えめにします。鉢が乾いたら灌水することで、太陽の贈り物である素晴らしい紅葉が現れます。
冬の管理
巻柏は寒くなると自然に葉を巻き込んで冬眠に入ります。晩秋に水やりを止めて、自然に乾し上げ、完全に乾燥させてから雨露のかからない場所に保管して越冬 させます。愛好家の間では、休眠した巻柏をコンテナに入れて軒下、車庫あるいは物置に収納する例や、棚をブルーシートで覆う例が見受けられます。翌春に覚 醒させるまで水やりをする必要はありません。なお、密閉した容器に入れることや暖房のきいた室内で保管することは避けて下さい。
2.培養土
水はけがよい弱酸性土壌の微粒を除いたものを用います。硬質鹿沼土、硬質赤玉土、桐生砂などです。川砂では水もちを補うためヤマゴケかミズゴケを1~2割混合します。よく使われる用土に、硬質鹿沼土単用、硬質鹿沼土7と硬質赤玉土3の混合土があります。
3.植え替え
植え替えの適期は、真夏を除いて葉桜の頃より秋の紅葉までです。一般には初夏までに終わらせるのが良いとされております。それ以外の時期の植え替えは根に付着した土を出来るだけ落とさぬよう留意して下さい。小苗のうちは毎年1回植え替えて、少しずつ根をゆるめるように鉢を順次大きくしていくと良いでしょう。
4.繁殖
繁殖には3種類の方法がありますが、一般には株分けと挿し芽の方法が用いられ、胞子を発芽させる方法は原種に戻ることが多いためあまり用いられておりません。
株分けは5~6月頃になるべく根を傷めぬように注意して行います。鉢に根を広げて植え、10日位は日陰で管理し、その後に普通管理として下さい。挿し芽は昨秋の紅葉がとれ、葉に活気の帯びるのを待って入梅前後に葉先を3cm位切り取り用土に挿して殖やします。発芽・発根とも葉先から伸びるため、葉の先が用土に密着するように留意して下さい。置き場は直射日光の当たらない場所で、過湿と乾燥に注意して管理します。
5.肥料
原種の巻柏は肥料がほとんど無い環境でも生育しますが、登録された品種の数々は適切な施肥によってその特徴が現れるようになります。施肥の時期は晩春から夏までとするのが一般的です。施肥の期間を長くとると生長が進み紅葉が鈍る傾向にあります。
具体例としては、植え付け時に3号鉢(直径約9cm)で大豆ほどの大きさの緩効性肥料3~4個程度を元肥として入れます。追肥としては、表土に固形肥料を置く例や株に液体肥料をかける例があります。巻柏の関連書籍や愛好家の間では、様々な肥料や施肥方法が紹介されていますので参考にされると良いでしょう。なお、肥料過多(肥料のあげ過ぎ)は巻柏に障害を起こします。多肥に弱い性質の品種もありますのでご注意下さい。
6.水やり
春~秋の成長中は葉が巻き込まない程度に水やりを行います。従って春と秋は1日1回、夏は充分に水を与えるため1日1~2回を目安に水を与えます。なお、盛夏の炎天下での水やりはひかえ、朝もしくは夕方以降の水やりを心がけて下さい。初冬から春の彼岸頃までは巻柏の休眠期となり、水を切って冬眠させます。巻柏は水を切らしても枯れることはありません。しかし、水のやり過ぎは根腐れを起こすことがあります。株が弱り、最終的に取り返しのつかない結果を招くこともありますのでご注意下さい。
7.日照
巻柏の美しさは太陽の芸術ともよばれ、日光によってその妙味を発揮するといっても過言ではありません。原則として太陽に良く当たる場所に置きますが、盛夏の日中の4~5時間は遮光ネットの下に入れ、直射日光を避ける方がよい品種もあります。
「いわひば平成銘品集」 栃の葉書房 本体価格1714円(税別)、B5判・総112頁、2012年初版
※品種ごとの適切な日照管理や肥培については、「いわひば平成銘品集」(監修 日本巻柏連合会、発行 栃の葉書房)を参考にすることが出来ます。